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2006年1月27日 (金)

左翼って、どうしてこうなんだろう

左翼って、どうしてこうなんだろう

「これだけは知っておきたい 日本と韓国・朝鮮の歴史」
中塚 明
ISBN4-87498-284-0

私は左派か右派かと聞かれれば「右派」だと思う。だから左派の本を意識的に読むようにしている。中塚氏は左派の歴史家だ。私は朝鮮の歴史も知りたいと思っていることもあって、この本を読むことにした。

前半部分にはさほど違和感もなく「親韓的だなぁ」と思うくらいで歴史書として読めたが、後半は「歴史書ではなく政治的アジテーション」としてしか読めなかった。

例えば以下の部分。

一九三六年、ベルリン・オリンピックで、「日本」はマラソンに優勝しました。しかし選手は実は朝鮮人、孫基禎でした。南昇竜も第三位に入賞しました。朝鮮の人びとは、両選手を誇りに思うと同時に、表彰台上にあがる「日の丸」にこみあげるくやしさと悲しみをあじわいました。朝鮮の新聞、『東亜日報』は孫選手の写真をのいせましたが、ユニホームの「日の丸」をけずりとって報道したのです。新聞は無期停刊の処分を受けましたが、ここにも朝鮮人の抗日の精神があざやかに示されていました。
(P159)

最後の「あざやかに」という言葉に引っかかった。「あざやかに」という言葉は価値判断を含んだ感情表現だ。私なら「はっきりと」とか「明らかに」と言う表現をする。

  • 朝鮮人の抗日の精神があざやかに示されていました。
  • 朝鮮人の抗日の精神がはっきりと示されていました。

「はっきりと」の方が「価値判断」を抑えた表現だと思う。政治的アジテーションでなければ、事実を伝えようとするのであれば「価値判断を含んだ言葉」はさけるべきではないか。

ところで「ユニホームの『日の丸』をけずりとって報道」ということは捏造写真を新聞に載せたということだ。「抗日の精神」を表現したいのであれば、写真はそのまま掲載し記事や社説で意見表明するべきなのではないか。事実を伝えるべき新聞の行為としては賛成できかねる。

     *     *     *

もちろん朝鮮総督府のこうした植民地政策でも、朝鮮人の民族魂をなくすことはできません。公立普通学校の校数・生徒数は増えては行きますが、私立学校・書堂(民間の私塾)の増加にはおよびませんでした。日本の支配者は「書堂」を「実にあわれなるありさまなり、.....ただ字を書き、字を読むだけで、なにも実用文明の学芸をさずけず、数百年来のふるくさい習慣をかたくなに守っているだけだ」(韓国政府学部『韓国教育』、一九〇九年参照)と見ていましたが、そこでは現状を打ち破り、独立の回復をめざして地道な教育がおこなわれていたのです。
(P123〜P124)

「地道な教育」の内容が知りたい。でなければ「日本の支配者」の見方が正しいかどうか判断ができない。政治的な文書であればアジれれば良いので、判断の材料を提供する必要はないけれども。

もっとも、題名に「これだけは知っておきたい」とあるように入口として書かれた本なのだろう、だから、こういったことを要求すべきではないのかもしれない。

    *    *    *

この本を面白く読めなかったかと問われれば、面白く読めた。文章は軽快で読み易いし、もっと知りたいと思ってしまったこともあった。例えば創氏改名についてだ。「入口」として書かれた本ならば成功していると言えるかもしれない。

けれども、歴史書としては「信用できない」と言わざるを得ない。歴史書としては表現に感情的な形容が多すぎるからだ、このことが歴史書ではなく政治文書だという読後感を与えている。

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