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2017年3月23日 (木)

共謀罪と監視社会

共謀罪と監視社会

中日新聞 社説:刑法の原則が覆る怖さ 「共謀罪」閣議決定
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2017032202000106.html

政府が閣議決定した組織犯罪処罰法改正案の本質は「共謀罪」だ。二百七十七もの罪を準備段階で処罰できる。刑事法の原則を覆す法案には反対する。

盗みを働こうと企(たくら)む二人組がいたとしよう。だが、人間というのは犯罪を共謀したからといって、必ず実行に移すとは限らない。現場を下見に行ったとしても、良心が働いて「やっぱり悪いことだからやめよう」と断念する、そんなことはいくらでもある。

共謀罪が恐ろしいのは、話し合い合意するだけで罰せられることだ。この二人組の場合は共謀し、下見をした段階で処罰される。そんな法案なのだ。何も盗んではいないのに…。

法律は人々の価値観によって支えられている。人々が悪いと思わないものを法律で犯罪と定めても無視される。それを無理して押し通そうとしたら大きな軋轢が起きる。

共謀罪に対して野党や一部のマスコミは攻撃するけれども、世論調査の結果では好意的な反応も多い。これは、私達の社会が「悪事を企むこと」「悪事をはたらこうと計画すること」を悪いことだと判断しているのだろう。実際、家庭や職場で子供や部下が悪いことを計画していたなら(それについて話していたら)、諫めたり叱ったりするだろう。

共謀罪が意外と受け入れられているのは、社会の価値観とさほどの違いがないからだ。

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悪だくみをしていた子供を叱っていたら、「何も盗んではいないのに…。」なんて言い訳されたら、どう感じるだろうか。自分なら「もっと叱らなければ」と思うだろう。

「何も盗んではいないのに…。」、まだやっていないのに罰せられるとアピールすることは、反感を買いかねない。良い反対方法ではないだろう。

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東奥日報 社説:基本的人権との摩擦生む/「共謀罪」法案
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20170322023565.asp

そもそもなぜ、この法案が必要なのか。政府は航空機乗っ取りなどの事例をいくつか挙げ「現行法では的確に対処できない」とする。野党が有力な学説を引き「ハイジャック防止法の予備罪を適用できる」と指摘しても「予備罪に当たらないこともある」と繰り返し、具体的に現行法のどこに不備があるのかは判然としない。政府は今後の審議で、こうした疑念や不安の数々にこたえていく必要がある。

何か新しい規則を決めたりするとき、それだけを見て良い悪いと判断することはできない、現在からの変化も考えなければならない。私は詳しく無いので、現行法で対処できるかどうかは知らない。確かに現行法で対処できるなら新しい法律はいらない。しかし、これは、逆に言えば、現在も共謀罪と同じような危険があると言うこと、あるいは共謀罪があっても現在と危険は変わらないということにならないか。

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中日新聞 社説:刑法の原則が覆る怖さ 「共謀罪」閣議決定
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2017032202000106.html

専門家によれば、英米法系の国ではかつて、共謀罪が労働組合や市民運動の弾圧に使われたという。市民団体の何かの計画が共謀罪に問われたら…。全員のスマートフォンやパソコンが押収され一網打尽となってしまう。もはや悪夢というべきである。

実は捜査当局が犯行前の共謀や準備行為を摘発するには国民を監視するしかない。通信傍受や密告が横行しよう。行き着く先は自由が奪われた「監視社会」なのではなかろうか。

社会は監視社会化しつつある。しかし、その理由は「共謀罪」や特定の政治思想にあるわけではない。理由は思想ではなく科学技術の進展にある。

ここ数年のニュースの変化を見てほしい。何か大きな事件や事故があると、現場の映像が放送されることが増えた。初期ではケイタイの写メ、最近はスマホでの動画が放送されることが増えた。

映像の提供者は監視社会に賛成で右傾化した人間だろうか。そんな事はないだろう。ただ、その場にいた人間。スマホだけでなく防犯カメラの映像も放送される事が増えたが、設置者は右傾化した人間ということもないだろう。

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IT技術の発展で、監視することのコストは低下しつつある。最近、GPSを使用した捜査をするなら捜査令状が必要との判決があったが、GPSによる捜査はGPPの精度の向上とコストの低下がもたらしたもので、政治思想によるものではない。

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人々は安心を求める。安心の為に自分の周囲の変化がないか見張っていたくなる。そして、科学技術の進歩は新しい監視方法を可能にする。その結果の監視社会であって、これは止めようがない。私達は、監視の方法や監視の記録の取扱い(漏洩しないような管理)についてぐらいしか出来ることはないのではないか。

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コメント

殺人や強盗、あるいは振り込め詐欺のような経済犯であっても、それらを防いで欲しいと言うのが一般の人の思いである。 実際に犯行に及んで捜査されて逮捕起訴収監されると言う事だけでは、逮捕起訴収監されるかもしれないという抑止力はあるものの、凶悪犯ほどそれを省みないだろうから、やはり犯行が計画されたのなら、それが実行される前に逮捕起訴収監できるようにしなければ、防犯にならないだろう。 

投稿: 北極熊 | 2017年3月23日 (木) 13時23分

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